結論:菱形筋は肩甲骨の間にあり、寄せて引く種目で鍛える。週2回が目安
僧帽筋の下にあり、切り離しては鍛えられません。家ならバンドプルアパート、ジムならシーテッドケーブルロウから始めます。
菱形筋の働き:肩甲骨を背骨へ寄せる
ケーブルを引き切る瞬間、左右の肩甲骨が背骨へ近づきます。菱形筋は僧帽筋の中部と一緒に、この「寄せる」動きを担います。
肩をすくめると、動く向きが変わります。寄せるときは肩甲骨が背骨へ横に近づき、すくめるときは肩が耳へ上がって首の付け根に力が入ります。
肩甲骨を寄せる種目(菱形筋も働く):低いバーからジムまで6種目
家ではバンド、公園では低い鉄棒、ジムではケーブルと、いる場所で選びます。バーは公園の鉄棒のように、しっかり固定されたものに限ります。
| 種目 | コツ | 難易度・器具 |
|---|---|---|
| インバーテッドロウ(斜め懸垂) | 引き上げる前に、肩甲骨を先に寄せる | 初級・低いバー |
| バンドプルアパート | 肩を上げず、両手を開くのに合わせて肩甲骨を寄せる | 初級・バンド |
| ワンハンドダンベルロウ | 体をひねらず、引き終わりで肩甲骨も背骨側へ寄せる | 初級・ダンベル |
| チェストサポートダンベルロー | 胸をベンチにつけたまま、肩甲骨を寄せて止める | 初級・ダンベルとベンチ |
| シーテッドケーブルロウ | 戻すときに肩甲骨を開き、引くときに寄せる | 初級・ケーブル |
| フェイスプル | 肩をすくめず、顔の横へ引いて肘を開く | 初級・ケーブル |
6種目とも、菱形筋は僧帽筋の中部や背中の筋肉と一緒に働きます。菱形筋のためだけの種目はありません。器具がひとつも無い家では、うつ伏せで腕を横に開き、肩甲骨を寄せる動きを練習します。
よくある失敗3つ
セットの終わりの数回で、肩甲骨の代わりに首や腰、肘が動き始めたら、次のどれかです。
翌日に張るのは首の付け根 → 肩を下げたまま寄せる
肩と耳の距離が縮んでいたら、寄せているのではなく、すくんでいます。引く前に肩を下げ、首を長く保ってから始めてください。それでも上がるなら重さを落とします。肩が上がっていても、鏡がないと自分では気づきにくいものです。
重さは上がったのに、手応えがない → 上体の角度を止めて引く
ケーブルの重りを一段増やした日は要注意。上体が後ろへ倒れ、腰が反って、体の反動で引くぶん、肩甲骨を寄せる動きは小さくなります。上体の角度を保てる重さまで下げてください。それでも倒れるなら、腰も楽になる胸当てつきのロウマシンやチェストサポートダンベルローに替えてください。
疲れるのは腕ばかり → 肩甲骨を開いてから寄せる
動いているのが肘ばかりなら、肩甲骨は寄りも開きもしていません。自分では動かしているつもりでも、スマホで背中側から撮ると止まっていることがあります。引く前に、肩甲骨が開く位置まで一度戻してください。
下げた重さは、形が整ってから戻せば問題ありません。
菱形筋はどこにある?僧帽筋との関係
菱形筋(りょうけいきん)は背骨から斜め下の外へ走り、肩甲骨の内側のふちに付きます。
- 小菱形筋 — 首の付け根あたりの背骨から始まり、肩甲骨の上寄りに付く
- 大菱形筋 — その下の背骨から始まり、小菱形筋より下のふちに付く
- 僧帽筋 — 首から背中の中ほどまで広がる表面の筋肉で、菱形筋の大部分を上から覆っている
小菱形筋と大菱形筋は同じ向きに働くので、鍛え分けは要りません。僧帽筋に覆われているぶん、皮膚の上から触っても区別はつきにくいので、「肩甲骨の間のあたり」と覚えてください。
- 背中の筋トレ3つの方向|ジム・ダンベル・自重の週メニュー — 背中全体のメニューを組みたい人へ
回数・セット・頻度の目安
最初はこのくらいから始めてください。
- 頻度 — 週2回
- 種目数 — 1回につき1〜2本
- 回数 — 8〜15回(バンドプルアパートは15〜20回)
- セット — 2〜3セット
背中の日がすでにあるなら、種目は足しません。いつものロウで寄せて戻す動きを丁寧にやれば、菱形筋も働きます。
楽になってきたら、先に回数を増やし、次に重さかバンドの太さを上げます。引き切った位置で1〜2秒止めると、寄せる動きを確かめられます。
僧帽筋の下にあるので、大きくなったかは鏡では分かりません。目安にするのは、引く種目の重さの伸びと、引き切った位置で肩甲骨を寄せて止められるかどうかです。
菱形筋に絞って回数やセット数を比べた研究は見当たらず、この数字は筋トレ全般の原則から置き換えた目安です。
- 猫背は筋トレで変わる?押す種目より引く種目を増やす理由と週2メニュー — 猫背が気になる方はこちら
肩甲骨の間のストレッチ2種と、やる順番
どちらも腕を前へ伸ばして肩甲骨を外へ開く形です。反動はつけず、ゆっくり開いて、痛みが出る前で動きを止めます。20〜30秒を2回(片手のほうは左右)。
- 両手を組んで前へ押し出す — 座っても立ってもできる。目の高さで押し出し、肩を上げず、背中の上のほうを丸めて肩甲骨を左右へ開く
- 柱を片手で握って腰を引く — 固定された柱に向かって立ち、胸から目の高さで片手で握る。腕を伸ばしたまま腰を後ろへ引き、上体を握った腕と反対側へ軽くひねる
肩甲骨の間がじわっと伸びてくる感じがあれば、その位置で呼吸を続けます。
運動の前に肩甲骨を寄せて開く動きを10回ほど(軽いバンドプルアパートでも可)行い、種目を終えてから上の2種を20〜30秒ずつ止めます。この2種はお風呂上がりに回してもよく、運動前にやるなら1部位あたり合計60秒未満に抑えます。
腕や手にしびれが出たら、すぐやめてください。骨粗しょう症の人、圧迫骨折をしたことがある人は、背中を強く丸める動きを自己判断で行わないでください。
- 筋トレ前のストレッチは逆効果?60秒を境に変わる答えと正しい順番 — 60秒の根拠はこちら
研究が示すこと
引く動きで肩甲骨を寄せると、菱形筋は働きます。
リハビリ動作を測った研究では、芝刈り機の紐を引くような動きと肘を曲げて後ろへ引く動きで、全力で力を入れたときの59%と66%まで活動が上がりました(Berckmans ら 2020)。これは活動の高さを示す数字で、筋肉が太くなる量を示すものではありません。
腕の向きを変えた4つの姿勢すべてで、大菱形筋と僧帽筋の中部は同時に働いていました(Fennell ら 2016)。どちらか一方だけを狙うのは、まずできません。この記事の6種目を直接比べた数字は確認できていないので、順位は付けていません。
中止して受診する目安
筋トレ後の張りと、理由のない痛みは分けて考えてください。肩甲骨の間が痛いからといって、菱形筋のせいとは限りません。
突然の激しい胸や背中の痛み、引き裂かれるような痛みが肩甲骨の間に出た場合は、筋肉の痛みと決めつけず、すぐに救急車を呼んでください。胸の圧迫感、息苦しさ、冷や汗、吐き気を伴う背中の痛み、顎や左腕に広がる痛みも同じです。
肩甲骨の間や内側の痛みが2週間ほど続く、安静にしていても夜間にも痛む、首を動かすと痛みが腕へ走る、腕や手にしびれや力の入りにくさがある、肩甲骨が浮いて見える場合は、筋トレやストレッチを続けず整形外科を受診してください。2週間はひとつの目安なので、つらければ待たずに受診してください。
よくある質問
菱形筋はインナーマッスルですか?
一般にはそう呼びません。僧帽筋の下にありますが、肩のインナーマッスルと呼ばれるのは回旋筋腱板という別の筋肉で、インナーとアウターという分け方も解剖学の用語ではありません。
菱形筋だけを鍛える方法はありますか?
ありません。シュラッグのように肩をすくめる種目は動きが別なので、菱形筋を狙うなら寄せて引く種目を選びます。
肩甲骨の間が痛いのは菱形筋のせいですか?
決めつけられません。突然の激痛は救急車、続く痛みやしびれは整形外科へ。上の「中止して受診する目安」を確かめてください。
菱形筋を鍛えれば猫背は治りますか?
治るとは言えません。菱形筋が弱いと猫背になる、という因果も確かめられていないからです。姿勢が気になる方には、押す種目と引く種目の比率から見直す猫背のコラムがあります。